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186-衆-安全保障委員会-4号 平成26年04月01日

江渡委員長

次に、伊佐進一君。

伊佐委員

おはようございます。公明党の伊佐進一です。
本日も、限られた時間、十五分間ですので、ワンイシューで質問させていただきたいと思います。

先ほど中山先生の方から南極の話がありましたので、私の方からはきょうは北極の話をしたいと思います。北極の氷が解けることによって日本の安保環境がどういう影響を受けるのかという議論です。

昨年の十二月に閣議決定されました国家安全保障戦略、この中にも、国際公共財、グローバルコモンズとして海洋と宇宙、そしてサイバーというものが掲げられているわけですが、もしかすると北極海というのは海洋の中でグローバルコモンズにならないかもしれない、こういう議論です。いかに北極海を平和の海にしていくかという点で議論させていただければと思います。

まず、先日まで横浜で開催されておりましたIPCC、気候変動の政府間パネルですが、この報告書の中にこうあります。北極海の氷がどんどん解けてきている、既に後戻りのできない状態になっている、一九七八年以降どんどん縮小してきております。

これまで、氷に閉ざされた地域、経済的にも軍事的にも、北極海というのは閉ざされた海でした。ところが、今、ここが開かれた海になってきている。つまり、安保上の話からいうと、北極海というのは背後の岸壁であって、ここをバックに守ればよかった、ところが、今、ここは開かれた海になってきている。配付した資料を見ていただくと、夏の六月から十一月まで、北極海航路、ロシアの北側の部分、ここが開通するようになりました。

私は、この点で三つの影響があると思っております。

まず一つは、航路、海の道という点です。極東と欧州を結んでいくのは、これまでであれば、マラッカ海峡を通ってスエズ運河を通って、大体一万二千海里と言われています。これが、開通した北極海航路を通っていくと六千五百海里、ここにはキロで書いていますが、一万三千キロ、大体約六割に短縮される。しかも、北極海のこの地域というのは、何よりも海賊のリスクが少ないという点があります。これまで実は、例えば二〇一〇年のデータでは、この北極海航路は船舶が四隻しか通っていませんでした。ところが、その三年後、二〇一三年には、七十一隻の船舶がこの北極海航路を通るようになっております。

もう一つの観点が資源です。この北極海の地域というのは、たくさんの石油であるとか天然ガスが眠っておりまして、世界全体の未発見の石油の一三%、天然ガスの三〇%が眠っているというふうに言われております。しかも、この地域は、北極海というのは実は深度が浅いんです。太平洋地域とか大西洋とかインド洋と比べると非常に浅いので、天然資源を掘りやすいというようなメリットもあります。

三つ目の観点、三つ目の変化が、安保環境の変化ということになります。この北極海というのは、特に冷戦期、ソ連の戦略原潜と、またそれに対してアメリカの攻撃型原潜が入って、つばぜり合いを繰り返していました。こうしたところが、今、潜水艦だけじゃなくて、水上が道が通るようになった。つまり、ヨーロッパと極東の間で機動的に戦艦を展開することができるというような状況に変化をしてまいりました。

そこで、こうしたさまざまな変化があるこの北極海ですが、私がまず最初に質問させていただきたいのは、恐らく、今のこの変化に伴って北極海にまつわるさまざまな国際的な課題が出てくると思います。

南極には南極条約というのがある。南極条約によって、例えば領土主権であるとか請求権、こういうものが凍結されていたり、あるいは資源についても、どの国も資源活動をすることは禁止されている、こういうルールがあるわけです。

では、今こういうさまざまな変化がある北極海に対しては、どういうような国際的なルールが適用されるか。あるいは、こうしたさまざまな課題について、特にこの北極海について、どういう場で今議論が進められているか。これについてまず質問させていただきたいと思います。

新美政府参考人

お答え申し上げます。

委員からも御指摘ございましたとおり、南極と異なりまして、そもそも北極海は海でございます。したがって、一般的に、国連海洋法条約を初めとする既存の海事、海洋関係の国際的なルールが適用されるというのが基本的な考えでございます。

特に、国際法の観点からは、北極海の沿岸の五カ国、アメリカ、カナダ、ロシア、ノルウェー、デンマークが二〇〇八年に、北極海に適用される包括的な法的枠組みを新たに策定する必要はないと。これはイルリサット宣言と申しますけれども、つまり、これは海でございまして、国連海洋法条約を初め既存の国際法の適用がされるということで、新たな法的枠組みは必要ないということを確認しておりまして、我が国も基本的にこの考え方を支持している次第でございます。

そして、議論の枠組みでございますけれども、北極をめぐる課題につきましては、多国間、二国間、さまざまな枠組みで議論がされております。特に、北極に特化して北極について設けられているものといたしましては、北極圏の国々を中心といたしました多国間の政治的協議の枠組みでございます北極評議会がございます。この北極評議会におきましては、北極における環境問題、委員御指摘されました環境問題、あるいは持続可能な開発等の課題について活発に議論が行われております。我が国も、昨年五月から新たに同評議会のオブザーバーとして正式に参加ができるようになりまして、同評議会の活動に貢献をしているところでございます。

伊佐委員

北極海は南極と違って海であるということで、国連海洋法条約というものが適用されるということだったと思います。この国連海洋法条約、グローバルコモンズをどうやって確保するかという観点は当然あるわけですが、実は北極海というのは非常に特殊です。このグローバルコモンズという観点から、果たしてそれがどうなのか。

例えば、この海洋法条約には二百三十四条という条文が一条入っています。これは、海洋法条約の交渉の過程の中でロシアとカナダがかなり強硬に主張して、ごり押しをして入った一つの条文があります。何が書かれているかといいますと、氷に覆われた水域については環境保護のために沿岸国が法令をつくってよい、そして、その国内法がさまざまな航行してくる船舶に対しても適用されるというような特殊な条文、国内法が適用されるんだという条文が入っています。

この条文によって、実は沿岸国はさまざまな主張をしておりまして、例えば、ここは内水だと。北極海ですが内水だと。つまり、領海のさらに内側の。無害通航権すら他国には与えられていないという主張をする国があったりとか、あるいは、本来であれば、EEZ、排他的経済水域の範囲の中では自由な通航ができるわけですが、例えばロシアの場合は、このEEZの中を通るときにはロシアの砕氷船を先頭にしていかなきゃいけない、そしてまた通航料も払わなきゃいけない、こういうようなロシアの措置がなされている。つまり、何らかの形で、北極海というのは実は航行がかなり制限されているというような状況です。というのは、実は北極海はほとんどがEEZに入ってしまいます。

先ほど政府から発言ありました北極評議会、これについても、確かにこういう枠組みがあるんですが、日本はこれに関与していくのは非常に容易じゃない。つまり、非常に寡占的な協議体、閉じられた協議体になっておりまして、沿岸国が中心になっておりますもので、なかなかほかの国が自由にさまざまな議論を発言権を持ってするというような状況に至っていない。

日本は確かに、昨年五月にやっとオブザーバーとして認められて入ったわけですが、日本がどういう選択肢を持ってこの協議体の中で発言をしていくか、影響力を持たせていくかというと、アメリカはアラスカがありますので沿岸国ですから、アメリカと協力をし合っていくということも一つ手としてはあるんですが、実はアメリカも、沿岸国の中で、北極評議会の中でそれほど強い力を持っていないんです。

それはなぜかというと、アメリカは実は海洋法条約を批准していません、入っていない。この北極評議会八カ国の中でアメリカだけが入っていない、それが一つ大きな足かせに実はなっているというような状況です。

では、日本がどのようにしてこの国際的な議論に向き合っていくか、北極海に対してどのように戦略的に向き合っていくのか。今どういう検討を政府の中で進めているかについて、お伺いしたいと思います。

長田政府参考人

先生御指摘の北極海の問題でございますが、昨年四月に閣議決定いたしました海洋基本計画の中におきましては、北極海に関する取り組みを重点的に推進すべき分野と位置づけまして、総合的かつ戦略的に進めることとしております。

特に、現在北極海では、先生御指摘のとおり、地球温暖化に伴いまして海氷域の面積が減少しております。このような気候変動が及ぼす海洋環境の変化を踏まえまして、海洋基本計画におきましては、北極海をめぐる、まさに海上輸送の確保、調査研究の推進、あるいは環境保全並びに国際的な連携や協力の推進を対応すべき課題として掲げております。

このため、政府としては、昨年七月に海洋政策本部の事務局におきまして、北極海に係る諸課題に対する関係省庁の連絡会議を設置しまして、北極評議会を通じた国際的な連携や協力、さらには先生御指摘の北極海航路をめぐる現状や課題、それから北極域の観測や調査研究の充実等につきまして、関係省庁間で情報の共有や連携を鋭意進めているところでございます。

伊佐委員

ぜひ政府も積極的に北極海の戦略に取り組んでいただきたいわけですが、各国はもう既に、日本が議論するはるか前から、いろいろな議論を行っております。

例えば、中国は九〇年代から北極海を重視している。温家宝首相、一昨年ですが、二〇一二年にアイスランドを訪れて、アイスランドとはもうFTAを締結しております。アイスランドのレイキャビクに大使館を設置して、レイキャビクの港を中国が独占的に使用できる海運のハブ港にしているというような状況もあります。

また、昨年十二月、中国は北欧五カ国との間で、中国・北欧北極研究センターというものを上海に設置することで合意した。かなり前向きな取り組みをしております。ぜひ日本も積極的な取り組みをしていただきたいと思っております。

安保に話を移させていただきますと、例えばロシア軍は、非常に北極戦略、軍事力が必要だということを強調しております。一つの理由は、北極海の沿岸国というのは、ロシア以外全部NATO同盟国ですので、ロシアだけが違うというような状況が一つあると思います。北極の名を冠するような北極軍というものを設置したり、さまざま積極的な取り組みをしております。

では、我が国に対してどういう影響があるか。先ほど申し上げたように、さまざまな観点から北極海の位置づけが、戦略的な重要性が増している。そうすると、各国、ロシアもアメリカも含めて、ここの地域に対して一定の戦力を割かざるを得ないというような状況になってくると思います。

では、米国の動きですが、二〇一一年五月、国防省がアメリカの議会に報告書を出しました。北極海作戦。この報告書には何と書かれているかといいますと、北極圏の部隊、施設の強化は当面見送り、二〇三〇年までは現有兵力で北極海にも対応する。つまり、北極海に特別何かをつくらないけれども、今ある兵力で対応する。つまり、太平洋艦隊の一部を差し向けるという意味です。

そうすると、当然、太平洋の今のリバランスの中で、太平洋を重視するという中でも、今は予算的な制限もありまして、アメリカがどんどん、もしかすると太平洋の軸足が十分ではなくなるのではないかという懸念の中で、さらにこの北極海というような新しい制約条件が出てくる。

あるいは、核抑止力という点に関しても、今は例えば、ロシアの戦略原潜、ロシアの北極海の海域の活動期間とか哨戒範囲というのが拡大する。アメリカにとっても活動期間、哨戒範囲が拡大する。そうすると、核抑止力という点でも日本に影響があるのではないか、そう思っております。

そこで質問させていただきたいのは、北極海でのこの動き、日本の安保環境にどういう影響があると防衛省は認識しているか、お伺いしたいと思います。

徳地政府参考人

お答えいたします。

北極海は、戦略核戦力の展開あるいは通過ルートとして使用されてきたところでございますし、また、海上交通路としての活用の拡大の可能性も考えられております。軍事的には、特に海上戦力の展開あるいは軍事力の機動展開といったようなことに使用される可能性も考えられますので、戦略的重要性は今後高まっていくものと考えておるところでございます。

それから、先生御指摘の国防省の北極海戦略でございますけれども、いろいろなリスク要因というところは考えておりますけれども、米国の国益あるいは国土を守るという観点から、同盟国などとの防衛協力の促進あるいは危機への備えを行っていくということにしていると承知をしております。

アメリカといたしましては、先生御指摘のとおり、アジア太平洋地域へのリバランスを維持する、これは先般のQDR等にも明確ではございますけれども、いずれにいたしましても、今後、沿岸国、あるいは海上交通路の利用国の民間あるいは軍事の両面にわたる動向などを踏まえまして、北極海をめぐる動向を注視していく必要があるものと考えておるところでございます。

伊佐委員

時間になりましたので、最後、外務大臣と思っていたんですが、私の一言だけ。

本当に、科学技術というのもまた一つの重要なカードであると思っておりまして、日本の科学技術力でぜひ交渉力を確保していただきたいと思います。南極と違って北極というのはまだまだこれからですので、ぜひ平和の海となるように御尽力いただければと思います。

以上で質問を終わります。ありがとうございました。

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