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186-衆-安全保障委員会-3号 平成26年03月27日

江渡委員長

次に、伊佐進一君。

伊佐委員

おはようございます。公明党の伊佐進一です。
本日は、十五分という限られた時間ですので、論点を一つに絞って質疑をさせていただきたいと思います。

それは、グレーゾーン事案と言われておりますが、今、安保法制懇でも五事例ということで議論いただいておりますが、そのうちの一つ、潜没航行する外国潜水艦、つまり、我が国の領海内で外国の潜水艦が潜ったままで徘回している、このときに我が国がどういうような対応をとれるかという点について、十五分間、少し掘り下げて質問させていただきたいと思っております。

まず、これは武力攻撃に至っていない事態という想定ですので、当然、まだ自衛隊に対して防衛出動というものは下令されておりません。しかし、何らかの対応をしなきゃいけないというような状況の中で、現在の法制度はどうなっているかといいますと、武力攻撃に至らない事態というものに対しては、自衛隊はまず警察権で対応します。この警察権は、潜没航行する外国潜水艦というものに対して、一般論としては恐らく自衛隊法第八十二条で海上警備行動というものが発動されるのではないかと思っております。

一応、念のため確認なんですが、こういう潜没航行する外国潜水艦に対して、八十二条、海上警備行動が発動されるのかどうか。というのは、潜水艦自体は海中にありますので、これは海上警備行動という位置づけで対処できるかどうか、念のため確認をさせていただきたいと思います。

中島政府参考人

お答え申し上げます。

先生御指摘の海上警備行動でございますが、自衛隊法八十二条におきまして、海上における人命もしくは財産の保護または治安の維持のため特別の必要がある場合に発令されるものでございます。

外国潜水艦が我が国の領海内を潜没航行している場合には、まさに海上における治安の維持のため、これは平成八年十二月二十四日の閣議決定、この閣議決定の題名は「我が国の領海及び内水で潜没航行する外国潜水艦への対処について」というものでございますけれども、これに従いまして、特段の事情がない限り、防衛大臣が内閣総理大臣の承認を得まして海上警備行動を発令するということとなっております。

伊佐委員

では、この海上警備行動が発令された場合にどこまで対応できるか。これは、これまで累次国会でも議論されてきたことだと思いますが、ちょっと詳しく、配付させていただきました国連海洋法条約、これに基づいて少しお話をさせていただきたいと思います。

まず、この十九条において、領海内では無害通航権というのが各国の船舶について認められている。これは、領空とか領土とはまた違って、領海だけ特別に無害通航権というものが認められている。この第一項を読みますと、「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。」と。第二項で、害する場合、「次の活動のいずれかに従事する場合には、沿岸国の平和、秩序又は安全を害するものとされる。」というふうにあります。これが、略しておりますが、aからlの中でさまざまな事例が具体的に列挙されている。こういう場合には沿岸国の平和、秩序、安全を害しますよというふうに書かれております。

では、害しますよとなった場合には、この第二十五条、無害でない通航を防止するため、必要な措置をとることができるということになっております。この必要な措置をとるという海洋法条約の第二十五条、これを国内法では何で受けているかというと、自衛隊法の第八十二条、つまり海上警備行動ということになります。

具体的には、海上警備行動、必要な措置として、例えば停船命令であるとか立入検査であるとか、あるいは警告射撃、こういうものも含めた強制措置についても、この海上警備行動の範囲内に入っているだろうというふうに解釈されます。

今までの話は、この第二十五条、全ての船舶についてこれは適用されるんですが、軍艦についてだけ、つまり、先ほど申し上げた潜没航行する外国の潜水艦については、実は国際法上さまざま留保がかかっております。

では、軍艦の場合は、この海上警備行動においてどこまで対応が可能かについて質問させていただきます。

中島政府参考人

お答え申し上げます。

今先生に御指摘いただきましたような事態におけます自衛隊の具体的な対応、これにつきましては、個別具体的な状況に応じて判断する必要がありまして、一概に申し上げることは困難であろうかと思いますけれども、一般論として申し上げますと、海上警備行動を命ぜられた自衛隊の部隊は、当該潜水艦に対しまして、海面上を航行し、かつその旗を掲げるように要求いたしまして、この潜水艦がこれに応じないような場合には、我が国の領海から退去するよう要求するということになろうかと思います。

ただ、外国潜水艦が軍艦である場合には、この潜水艦は、国際法上、我が国の領海内においても我が国の管轄権からの免除というものを有しておりまして、自衛隊はこれに反するような強制的な措置をとることはできないものというふうに考えております。

他方、仮に、この潜水艦が攻撃を行うといった事態で我が国の船舶に危害を及ぼすような場合などには、その行為を排除するため、海上警備行動により与えられました権限によりまして、その事態に応じ、合理的に必要とされる限度で武器を使用することができるということになっております。

伊佐委員

今の制度上では自衛隊は退去要求はできる、これがまさしくこの海洋法条約の第三十条、退去することを要求することができるということだと思います。

それ以上については、実は、第三十二条、これは何を書いているかといいますと、軍艦については、政府船舶に与えられる免除に影響を及ぼすものではないと。この免除というのは、沿岸国の管轄権、つまり日本の管轄権から免除される、つまり日本の管轄権が及ばないというような話です。

つまり、全ての船舶について第二十五条で必要な措置をとることができるんですが、ただ、軍艦については第三十二条で一部免除されているというような状況になっている。その免除がどこまでかというところが争点になってくるのであろうと思っております。

具体的にさらに質問させていただきますが、では、今まで海外において、潜没航行する外国潜水艦に、退去要求まではこの第三十条でできるわけですが、それ以上の措置、例えば爆雷を投下するとか、こういう強制措置を行った事例を政府は把握していらっしゃるかどうか、質問したいと思います。

中島政府参考人

お答え申し上げます。

防衛省といたしまして、海外における御指摘のような事例を網羅的に掌握しておるわけではございませんけれども、一九八二年、スウェーデンが同国の内水におきまして国籍不明の潜水艦に対して爆雷を使用した事例があるということは承知いたしております。

ただ、これは、冷戦中のかなり緊迫した国際環境にあったということが一つ、それから、この事例は、以前にも領水内で潜没航行する潜水艦が幾度となく探知されていた、こういう状況の中で、浮上要求、退去要求のために爆雷を使用したいわば特殊なケースではなかろうかというふうに理解しております。

伊佐委員

一九八二年のスウェーデンの事例を挙げていただきましたが、その一九八二年の前、既に八一年の段階から、恐らく当時のソ連の潜水艦が執拗に領海侵犯を繰り返していたと言われております。

実は、その前年、一九八一年になぜそれがはっきりとしたかといいますと、ソ連の潜水艦がスウェーデンの領海内で座礁したわけです。このソ連の潜水艦は当時ウイスキー級という潜水艦でして、これはよくウイスキー・オン・ザ・ロックというふうにやゆされて言われた事件です。

このスウェーデンの事例では、先ほどおっしゃっていただいたとおりで、爆雷をもって排除したということがありました。このスウェーデンの強制措置は、何に基づいた措置だったのかということなんです。

国際法上は自衛権というものが認められているというふうにも言われておりますが、スウェーデンは実はこのときは自衛権を発動していない。なぜかというと、自衛権を発動すれば安保理にちゃんと報告をしなきゃいけない。ところが、スウェーデンは、そのときは安保理に報告をしていないわけです。つまり、彼らは自衛権として対処したわけじゃない。では、一体何に基づいて対処したのか、もしかすると国際法に違反しているのか、こういう可能性があるわけです。

実際のところは、これは、その爆雷を受けた潜水艦の国籍、ソ連かもしれませんが、そこは最終的には国連に提訴していないので、うやむやになっています。何に基づいて爆雷投下措置を行ったか。

これを我が国に置きかえて考えてみますと、例えば、我が国の領海に潜水艦が入って徘回する、退去要求にも耳をかさないということになる。このときのこのグレーゾーン、埋め方は二つしかないと思います。

一つは、まずマイナー自衛権という考え方で、つまり自衛権を発動する。法制懇の先生方の議論を聞いておりましても、例えばこういう発言があります。武力攻撃に至らない侵害でも、それが繰り返し行われて集積されれば武力攻撃とされると整理するしかない、つまり自衛権が発動できるという発言です。

しかし、先ほど申し上げましたように、当時の冷戦下で何度も何度も執拗に領海侵犯を繰り返してきた、このときでさえ、結局スウェーデンは、過去の例では自衛権という形では発動していない。

日本がこういう国際状況の中で先駆けて、グレーゾーン事案についてはマイナー自衛権、自衛権で対応するという宣言をすることは、今の状況では国際的にもかなり先進的な宣言になるのではないかと思っております。もちろん、国内的には、個別的自衛権の三要件についても、急迫不正の侵害が認められていない中で自衛権を発動するというふうな、大きなインパクトのある解釈変更になるということを指摘しておきたいと思います。

もう一つのやり方。先ほどは、このグレーゾーンを埋めるのは、自衛権を広げるか、あるいはもう一つは、国際法上の第二十五条の解釈、必要な措置はどこまで果たして認められるのか。三十二条で免除されて抜かれたとしても、どこまで認められるのかということを議論するということもあるかもしれません。

先ほど説明させていただいたとおり、この二十五条、必要な措置というのは、三十二条で、つまり沿岸国の管轄権から免除されている。日本の管轄権が及ばないので、例えば拿捕するとかあるいは立入検査をするとか、これは管轄権に基づく措置なので、こういうものは恐らく対象にならないと思います。では、例えば警告射撃はどうなのかということは、実はこの海洋法条約でははっきりとしていないわけです。

そこで質問ですが、この二十五条に定められた必要な措置、どこまで認められるかということについて、国際法上、定まった考え方があるのかどうかについて簡潔にお答えいただければと思います。

石井政府参考人

お答え申し上げます。

先ほど委員おっしゃいましたとおり、二十五条一で、無害でない通航を防止するために必要な措置をとることができるというふうに定められております。これは外国の軍艦などにも適用される。

一方、沿岸国が無害通航に当たらない航行を行っている外国の軍艦などに対して必要な措置をとる場合に、そのような措置は、先ほど来議論になっておりますように、免除を侵害しない範囲で、かつ、その軍艦による侵害行為との比例性が確保されたものでなければならないということになっております。

そういう意味で、国際法上、沿岸国がいかなる措置をとり得るかについては、個別具体的な状況に応じて判断する必要がございますので、一概に申し上げるのは困難だと考えております。

伊佐委員

そうなんです。結局、国際法上では定まった考え方がないということだと思います。つまり、このグレーゾーンの今挙げた事例については、我が国の憲法九条のところに大きく起因する問題というよりは、実は国際法上、恐らく国際社会が大きく争点にしている問題だ、我が国独自の問題じゃないということだ、そう思っております。

そういう意味では、先ほど申し上げたようなスウェーデンの事例においても、国際法上、この爆雷投下措置が違法だったかどうかということは結局誰もわからないんです。何が違法かということについて国際法では明示していないから、こういうことが起こるということだと思います。

それであるなら、では日本だけがここまでやりますよ、ここまでは自衛権でやりますよ、あるいは、こういう対応でしますよと議論を先行して進めて、これを国際社会の中に広く、議論をリードすることが本当にいいことかどうかということは、私は慎重に議論してもいいのではないかな、そう思っております。

先ほど申し上げたように、グレーゾーンを埋めるのは、マイナー自衛権を広げていく、あるいは、まだ定まってない国際社会の考え方について、つまり、国際海洋法条約二十五条でどこまで許されるかということについて、他国を巻き込んでの議論もあり得るのではないかと思っておりますが、最後に外務大臣の御感想をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣

領海において無害通航に当たらない航行を行っている外国軍艦等に対して沿岸国がとり得る措置の具体的な内容については、個別具体的な状況に応じて判断する必要があり、一概に申し上げることは困難であると考えていますが、先ほど来の御質問を聞いておりまして、国際的にも、この問題につきましては、基準とか相場観というものは存在しない、これが現状だと認識をしております。

ただ、今、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会、安保法制懇におきましては、領海内で潜没航行する外国潜水艦の事例についても議論が行われていると認識をしております。ですから、まずはこの懇談会においてしっかり議論が行われることが大事だと思っております。この議論の行方を見た上で、その後、我が国として、与党・政府としての議論も行うことになると考えております。ぜひ、この議論の行方を見守った上で、その後の対応を考えていきたいと思っております。

伊佐委員

こうした国際協調のもとでの議論というのもあるのではないかということを申し上げて、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。

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